小説世界樹の迷宮II

初陣

「こんなところで休んでいていいんですか」 とげのある響きだ、とウチビはいくぶんうんざりしながらその娘を見やった。白い肌と青い目、なにより夕日に照りかえる秋の稲穂を溶かしこんだような髪はウチビにとって美しかったが、内面には辟易していた。 「み…

死亡者は

その影は一歩ずつ小刻みに揺れていた。しばらくその背中を眺めてから、エンショはため息をつき隣りに並んだ。 「手伝います」 両手に薪を抱え、歩くのに精一杯だったのだろう。自分を見下ろす長身の男の頬、褐色の肌ではよくわからないが狼狽の血の気が差し…

管理者シキョウと剣術師範コウセンの会話

「私たちの前回の失敗の」 静かに話しはじめた女剣客の、頬に残る刀傷をシキョウはじっと見つめた。彼はその由来を知っている。彼女が手塩にかけて育てた奴隷女に刻み込まれたものだ。それがシキョウの中で封じていた痛みを呼び起こした。 「原因はね、シキ…